第2話ー自称「占い師」の呪い

今日も定刻通りに【Bar Siva】は開店した。

リリーはカウンターの前に座る女性に聞いた。
「何を飲まれますか?」

女性は少し悩んで
「ハイボールもらえますか?」

リリーはボーイのサトシに目配せをした後に
「あなた、大丈夫?」
と女性に向かってきいた。

女性はうつむき加減で小刻みに数回頷いた。

リリーは単刀直入に言った。
「大丈夫よ!あなた死なないから」

女性は驚いて顔をあげ、リリーを見つめた。
その女性をまっすぐ見つめながらリリーは続けた。
「次の誕生日が来てもってことよ。

人は必ず死ぬんだから、いずれはお迎えが来るわ。

でもね、あなたの寿命は次の誕生日じゃないわ」

女性は震えながら
「でも・・・あの占い師さんに言われたんです。

33の誕生日に死ぬって・・・」

リリーは珍しく苛ついた。


断りもなくタバコに火をつけて大きく息を吸った。
ゆっくり息をはきながら、ハイボールを持ってきたサトシにビールのサインを送った。

リリーはタバコを吸いながら
「たまにいるのよね。暗黙のルールも知らない占い師もどきさん。

あなたに、そんなツマラナイことを言った自称占い師さんとやらは、もどき以下ね」

「そうなのですか?私、気にしてないつもりだったんですが33の誕生日が近づくにつれて不安になってきて・・・」

「大丈夫よ!気にせず暮らしていいのよ」

女性は大きく深呼吸をするとポロポロ泣きだした。
泣きながらハイボールを飲んでいる。

「ゲホッ・・・ゴホッ・・・グスン・・・グビグビ・・・」

リリーはタバコを消しながら
「泣きながら呑むなんて、あなた器用ね」
と言いながら微笑んだ。
「そんな器用な人が簡単に死なないわよ」

女性はハイボールを飲み干して
「主人と子供の顔が見たくなりました。

帰ります。ありがとうございました」


鼻声で挨拶をして、会計を済ませて慌ただしく帰って行った。

サトシがカウンターのグラスを片付けながら
「こんな酷い話ってあるんですね」
と切り出した。

リリーはタバコに火をつけて
「占い師って名乗ることに苛立つわ。ましてや死ぬなんて口にするのは無しね」
怒った口調で話した。

サトシが気を利かせて2杯目のビールを持ってきた。

「ママ・・・ママはあの世から来たのですか?」

リリーは顔色1つ変えずに
「みんなあの世から来てるじゃない」
と答えた。

サトシはビールを手渡しながら
「本当ですね。そうですよね。みんなあの世から来てるんですよね」

頷いていた頭を止め、リリーを見つめて


「でも、ママは僕らと経緯が違うって言ってませんでしたか?」
とたずねた。

リリーはビールをグイっと呑んで
「そうね・・・働いてたわ・・・あの世で」
サトシを見つめ返した。

「何か知りたいの?」

「あの世で働くってイメージ湧かないですよ。どういうことですか?」

「んー・・・さしずめ、あの世の公務員ってところかしら?」

サトシはキョトンとした。
目をしばしばさせて質問をしかけたとき
店のドアが開いた。
反射的にサトシは
「いらっしゃいませ〜」
と言った。

・・・
【あの世の公務員】
あの世で働くって?
謎は深まるばかりなり・・・

つづく。