第7話ー自称視える男

店のドアの前で立っている男がいる。

その男、本島は悩んでいた。

 

こんなことしたら、きっと、リリーさんは怒るだろう。

 

同級生に頼まれた事とはいえ、浮かない気持ちだ。

ソワソワしていると待ち合わせの男が来た。

 

男は偉そうに

「入ろうぜ」

と言いながら手を祓う様なしぐさをした。

そして意を決してドアを開けた。

 

 

「いらっしゃいませ〜」

ボーイのサトシの声が響き渡る。

 

ドアを開けて真っ正面にリリーの顔が見えた。

 

本島はリリーに今日の事を説明しようとした、その前にリリーが口を開いた。

「あなたね?ずっと雑念を送ってきてる人は」

 

リリーは少し不機嫌そうに本島の後ろから入って来た男に向かって言った。

 

「気が付いてくれてたんですね〜」

ヘラヘラしながら、その男、佐々木は答えた。

 

「どういうつもりなのかしら?」

腕組みをしたままタバコを吸っているリリーがきく。

 

カウンターに座りながら本島が

「今日、予約している本島です。正確に言いますと佐々木の代わりに予約を取りました」

隣に座った佐々木を指しながら説明した。

 

佐々木が

「俺が予約しようと連絡すると断られるんです。

1回や2回じゃないんで、俺じゃ予約出来ないんだと思ったんで、本島に頼んだんです」

嬉しそうに話す。

 

リリーの機嫌が悪いのを見てサトシが言った。

 

「お飲み物、何になさいますか?」

 

佐々木がテンション高めに

「ハイボール」

というと本島が

「私はビール。リリーさんも何か呑んでください」

焦った声でかぶせ気味に言った。

 

リリーは腕組みをしたまま

「で、何の御用なのかしら?雑念まで送ってきて、人を試す様なことして」

淡々と強い口調で言った。

 

佐々木は

「リリーさんに会ってみたかったんです。

なのに全然予約取れないし、もしかして俺のこと視えてて嫌なのかな〜って思って、

ますます会いたくなって…」

はしゃいで話す。

 

本島がリリーに言われる前に言い訳をはじめた。

「私が前にココに来た話を佐々木にして、

こいつも来たいって言うんで予約してみればって言ってたんです。

でも、何回連絡しても予約出来ないから代わりに予約してみてくれって頼まれて・・・」

 

「で、会ってみて気が済んだかしら?あなたの言い訳も必要ないわ。

来る前から変な映像ばっかり送ってきてて正直、気分も悪いわ。

一体何の意味があるのよ」

リリーは不機嫌そうに淡々と話した。

 

佐々木は

「映像も見てもらえたなんて嬉しいです。やっぱり、リリーさんって本物なんですね〜」

ウキウキ声で話す。

 

その横で本島は、こうなることは想像の範囲内であったとしてもショックを受けていた。

あからさまに落ち込んでいる。

 

そんな本島を無視してリリーは

「だから、一体何の意味があるの?

人を気分悪くさせて、人を騙して、友達を落ち込ませて。

それであなたはテンションが上がるって、

人として最悪って自分で理解してるの?」

怒った口調で言った。

 

佐々木は意地悪そうな笑みを浮かべながら無邪気に話す。

 

「人としてなんて俺には、どーでもいい!

生きてない霊体を操れる特別な力を持ってるなんて選ばれし者の証!

あなたが優れてるっていう噂を聞けば聞くほど勝負したくなったんですよ〜。

あなたが一瞬怒ってくれたおかげで、あなたの家を読み取れました。

だから…俺は今、1番の使い手である女の霊を、あなたの家に向かわせました。

その女は色んなことを引き起こします。もちろん、良いも、悪いも…」

 

リリーは大きく溜息をついて、新しいタバコに火をつけた。

上に向いて煙を吐き出しながら

「最悪も通り過ぎてるのね」

吐き捨てる様に言った。

 

リリーは続けて

「うちの家がわかっても入れないわよ。あなたの力じゃ…

それよりも撤退させた方がいいと思うわ。

1歩でも無理に踏み込むと強制終了させられるわよ

 

運ばれてきてたグラスを左手で持ち、本島へ向けてエアー乾杯をしてビールに口をつけた。

本島は落ち込んだまま小さく頷いて、固まっていた。

横の佐々木は気にもせずリリーにきいた。

 

「どういう意味ですか?強制終了って。

聞いたことないですし、俺に霊を引き上げてもらいたかったら、

俺の方がすごいって認めたら返却してあげますよ〜」

自信満々に言う。

 

そんな佐々木を見てリリーは

「ぶ、ぶぅーーーーーアハハッ。

ねぇ、あなた、自分の出した使いが今、どうなってるかも分からないのかしら?

意識飛ばして見てきたら?」

笑いをこらえながら話す。

 

佐々木は狼狽えて、リリーの言われた通りに意識を飛ばして様子を見ながら

「えっ?!どういうこと?家の前で入れないって?

何で?…怖い?…何が?何が怖い?…」

誰かと話している様だ。

 

リリーが美味しそうにビールを呑んで口を出した。

「帰って来させたら?

可哀想よ。

それとも強制的に成仏してもらう?」

 

佐々木は動揺を隠し切れないまま

「帰っていいよ。俺の家に先に帰っておいて」

お使いに出した女性に指示を出した様だ。

 

 

 

佐々木は意識を目の前のリリーに戻して言った。

「なぜ入れなかったんですか?誰か居るんですか?

それとも、あなたが貼った結界?」

 

「両方かな?…うちの娘さんが起きてるってことね。

ナチュラルバリケードタイプなの

リリーは笑いながら言った。

 

「こっちに、その女性呼べば良かったのに、こんなバカげた事から解放してあげたのに」

リリーは真顔で言った。

 

佐々木は動揺したまま

「それだけ、あなたの力がすごいって事ですよね?…

なのに、なぜ、そんな使い方なんですか?もっと色んなこと出来るじゃないですか?」

リリーへ尋ねた。

 

リリーは

「あなたが使い方、間違えてると思うけど?

霊体をそんな風にする必要ある?

この世界に良いも悪いも無いのかもしれない…けど、あなたの使い方は力の無駄遣いにみえるわ」

いつも以上に冷静な声で話す。

 

「そこまである力、少し考えたら?」

リリーが続けて言った。

 

佐々木は落ち込んだ様子で

「俺の負けです。初めて負けました。

みんな怖がって俺に頭を下げるのに…

あんなにお使いで怖がられたのも初めてでした。家に居るのはバケモノですよね?

 

酷いことを言う。

 

リリーは笑いながら

「人の娘をつかまえて、バケモノは無いわぁ〜」

と明るく言った。

 

その後、佐々木は霊体を使って人に危害を加えることはやめたらしい。

後日、本島が泣きながら謝りに来た時に聞いた話である。