第13話ー興味本位

今夜は以前、鑑定した方からのご紹介で、わざわざ地方から来られるお客様である。

 

ボーイのサトシは定刻通りに看板を点けて言った。

「ママ、時間になりました。先に呑まれますか?」

 

リリーはタバコを吸いながら答えた。

「いいえ。大丈夫。後、数分で来るわ」

 

サトシは驚きもせず

「わかりました」

と言い、そのまま続けた。

「今夜のお客様の依頼も見えてるんですか?」

 

リリーは表情も変えずに答えた。

「だいたいね〜。でも、今から来る人は悩んでない人だから。

ほら、よくあるケースの1つね」

 

「なるほど!県外から、わざわざ凄い話ですね」

サトシは大袈裟に驚いた。

 

リリーはサトシをチラッと見たが何も答えず、タバコを楽しんだ。

 

すると、店のドアが開いた。

 

「いらっしゃいませ〜」

サトシの明るい声が店内に響き渡る。

 

店へ入って来た男性は

「こんばんは〜。予約してた鈴木です。こちらで良かったですか?」

と爽やかに言った。

 

「こちらで大丈夫ですよ〜。お席へどうぞお座りください」

サトシが笑顔で対応した。

 

リリーは鈴木がカウンターへ向かって歩いてくる間に

「ようこそ〜。

遠くから、わざわざありがとうございます。

何を呑まれますか?」

と言いながら、右手で席へ促した。

 

鈴木はニコニコしながら座って

「とりあえずビールもらえますか?」

と安定した爽やかさで言った。

 

リリーは笑顔で

「かしこまりました。私もご一緒にビールを乾杯しても、構わないでしょうか?」

鈴木を見た。

 

「あっ、どうぞどうぞ。気が付かなくて、すみませ〜ん。ぜひぜひ!」

鈴木のニコッとした歯がキラッとして見えた。

 

リリーは厨房前のサトシに目配せをしてから直球勝負に出た。

「そんなに私が珍しいのかしら?何も占いしてもらう気もないわよね?」

 

鈴木はカウンターパンチを喰らったみたいに目をパチパチさせて

「えーーー?そんなことも分かったりするんですか?…

いやぁ〜マジ、ビックリです。

でも、霊視とか興味あるに決まってるじゃないですか〜」

テンション高めで答える。

 

鈴木は続けて

「マジ、何聞いていいかも分かんないし、

知りたいことは山ほどあるけど、何を聞くかの検討もつかないし、

じゃー、とりあえず来るかってなったんです」

正直に話した。

 

リリーは小悪魔的笑みを浮かべて

「正直なんですね。私は興味本位で来店されることを悪いとは思ってないですよ。

ごくごく普通のことだと思うんです。

視えない人からすると、視える人って気持ち悪いだけじゃないですか?

だからこそ、興味を持ったり、拒絶したり、全否定したり、

いろんな人がいるのが普通だと思います」

淡々とした低めのトーンで説明した。

 

鈴木は前のめりに

「ですよね?興味持つのが悪いことじゃないですよね?

手品とは違うからタネ明かしがないとしても、

知りたいというか、体験してみたいって思ったんです。

俺は霊体験的なことを1度もしたことないし、

よくいう妖精?ちっさいオッさんも見たことないし、イメージ全く出来ないんです。

でも、こんな俺でも何か視えない世界に触れられたら?って思ったんです」

鼻息が荒い状態で語る。

 

リリーは誠実な鈴木に好感を持った。

「ねぇ、聞いてもいいかしら?

あなたは、どこまで視られてもいいの?NGは、ないのかしら?」

 

「NGって、どこまで視えるか分かりませんが

恥ずかしい場面はモザイクで、お願いします」

 

鈴木の回答にリリーは爆笑した。

「あなた、面白いわね〜。じゃ、遠慮なく・・・」

そう言って、リリーは第三の眼に集中して目を閉じた。

リリーが目を閉じてる間にサトシがビールを運んで来た。

リリーの邪魔をしない様に、静かに置いて、鈴木には手のひらで、どうぞという合図をした。

 

リリーが、ゆっくりと目を開けた。

そして、ゆっくりと話し出した。

「あなたの前の彼女って年上で、つい先日、別れた人…

少し茶色い髪の毛で肩まで長さがない感じの胸が大きくて、

スレンダーではないけど、ポッチャリでもなくてってスタイルの人…わかる?」

 

鈴木は驚いた顔で

「わかるけど…」

と言いながら椅子の背に、もたれた。

 

「その彼女とは不倫だったから別れたの?それとも、遊びだったの?」

リリーの言葉に鈴木は

 

「えーーーー?!そんな感じなんですね〜何も言わなくても視えるってヤツですか?!マジ驚き過ぎて言葉もないですわ」

かなり驚き過ぎて笑いが止まらない。

 

リリーは、とても冷静に

「不倫は、あなたには向かないわよ。

もともとは気にならない人なんだろうけど、根本は自分だけを見てほしい人でしょ?

素直になるのが1番よ」

と鈴木を真っ直ぐに見つめて言った。

 

鈴木は驚きが収まらないまま

「いや〜、本当にすみませんでした。舐めてました。

どうせ何も視えないのが普通って勝手に思ってたんで、いきなり言われると焦りますよね〜」

早口で言う。

 

「何の問題もないわよ。

だって、信じてなくて、茶化すというか、興味本位でって良くあることだから、本当に。

でも、あなたの場合は、その中でも素直に聞く気があるから良かったわ」

リリーは微笑んだ。

 

鈴木は興奮したまま

「何聞いて良いのか混乱してますが、運命の出逢いとかありますか?」

一生懸命質問してみた。

 

「運命といえば運命ね。出逢いはあるわよ。

あなたの気持ち次第ね〜。今のところ結婚に興味ないんでしょ?」

 

「そんなことも分かるんですか?!

マジ、ヤバイとしか言いようがない。結婚するメリットが分からないんです」

鈴木はテンション高めで答えた。

 

リリーは笑顔で

「ま、将来は結婚するから安心したら?とにかく乾杯させて、喉乾いたし」

そう言ってグラスを持った。

 

そしてリリーは

「君の未来に乾杯」

言った側から声を出して笑いながら鈴木のグラスと乾杯した。

 

リリーはビールを半分ほど飲み干すと

「あーーーー。美味しい!そして、楽しい出逢いにも乾杯ね」

と言った後にビールグラスを鈴木に向けてエア乾杯した。

 

「で、何か聞きたいことある?」

リリーは鈴木に、いちよ聞いた。

 

鈴木は

「んーーー」

と唸りながら考えてみたようだが

「思いつきませんわー。正直、さっきの話を言われただけで、いっぱいいっぱいです」

と明るく答えた。

 

リリーが軽いトーンで言った。

「じゃー、今夜は呑みますか?」

 

「いーですね〜、今夜は呑みましょう」

 

2人は、そう言って又、乾杯をした。

・・・

 

鈴木が結婚するという連絡は

 

それから数年経ってからのことだ…