第18話ー血筋

ボーイのサトシは爽やかに

「ありがとうございました」

と言ってドアの前まで見送りをした。

リリーはタバコに火をつけながら、メールの音が鑑定中に鳴っていたスマホを取った。

メールを読んでリリーは即、電話をした。

「もしもし、姉ちゃんの部屋、行った事あるよね?そこに今から意識飛ばしてくれない?」

訳わからない唐突な話だ。

リリーは続けた。

「そこに、霊体の男性が入って来ていて、姉ちゃんが怖がってヘルプが来たの。

だから、姉ちゃんの家に意識飛ばして部屋中をウロウロしてくれる?

そうしたら、私がビスを打つから」

どうやら、リリーの電話の相手は末娘さんの様だ。

「意識飛ばした?…分かった!

じゃー、部屋の中をウロウロしてみて。

霊体には、出てってもらえば、それだけで良いからね」

リリーも、そう言いながら遠隔で娘の家に意識を飛ばした。

そして、部屋の四隅に 杭の様な物【ビス】を打ち込み、結界の様なものを作る。

それが完了すると、リリーは言った。

「ありがとう!これで綺麗になったと思うわ。ごめんね。寝る前に…おやすみ」

そう言うと、リリーは電話を切った。

全部聞いていたサトシが口を開いた。

「ママ、何かあったのですか?」

「長女からメールで、家に霊体が入って来て怖いから、どうにかしてくれって連絡だったの。

私がやっても良いのだけれど、うちのチビが適任だから電話して、対処してもらったって話よ〜」

リリーはため息をついた。

「その対処くらい覚えろって言ってるんだけどね〜。

長女は防御が弱いから、たまにヘルプメールが来るのよぉー」

リリーは先ほど帰った、お客様にいただいたビールを呑んだ。

サトシは素朴な疑問を口にした。

「ママって、そのチカラは遺伝か何かなんですか?」

「えっ?言ってなかったかしら?

我が家は全員、女性に受け継がれてるわ。ただし…様々だけどね」

リリーはニコッと笑った。

「受け継がれるんですねぇ。それって、どんな感じなんですか?」

サトシは思った事をストレートに口にした。

「んーー。我が家の場合、母方の血筋で「視える」とか色んな現象を受け継いでるみたい。

で、私の記憶にある1番の出来事っていうのは、小学校上がる前か1年生か定かではないんだけど…」

リリーは少しテンションが上がった。

そのまま続けて

「間借りしていた家での出来事で、怖くなったから夕飯の時に皆んなに話したの」

リリーは遠い目をして、その時の光景を思い出した。

リリーの家は、父、母、姉3人にリリーという6人家族だ。

お母さんが炊飯器から家族のご飯をついでくれている時に子供の時のリリーが口を開いた。

「そう言えば、今日、2階に上がろうと階段を上って行ったら、2階の部屋に白い着物を着た、お侍さんが座ってて驚いたの!」

リリーの母親は、ご飯を注ぐ手を止めもせずに答えた。

「へぇ〜。あなたも見たの?そうなのよ!お侍さん、見かけるよね〜」

リリーは目がパチクリして言葉も出ない!

そこへ1番上の姉が、ご飯を食べながら、リリーの方へも向かずに答えた。

「リリーも見たんだね〜。あの後、最後まで見た?」

リリーが首を横に振った。

姉は続けて

「あの後、切腹するんよ。よほど、この世に未練があるのか、何回も見るよ。切腹のシーン」

箸を止めずに話す。

リリーが眉間にシワを寄せながら聞く。

「切腹って何?」

「お侍さんが腹を自分で切ってけじめをつけることよ」

1番上の姉は淡々と答えてくれた。

この一連の会話に、全く視えない父親は無関心で、テレビの野球を観ていた。

2番目の姉と、すぐ上の姉も当たり前の様に何も動じない。

リリーは、そこで初めて自分の家の不思議さを思い知ることになる…

サトシが突然質問した。

「ママの家系の女性に受け継がれてるとして、皆さん、色々な力なんですか?」

「そうね。長女は、人が死ぬのが分かるの。いわゆる死臭がするらしい。

昔、ご近所の文房具屋さんの前を一緒に通った時に、『臭い』って連呼して、

3日以内に葬儀が出るからって、いきなり言うから内心ドン引きしてたの。

そしたら次の日に家の前に葬儀の案内が出ていて、かなり驚いたわ」

「死臭って何ですか?怖すぎません?」

サトシが引き気味に話す。

リリーは半笑いで説明を続ける。

「普通にキモいって思うわ〜。分かる!

でね、次女は、お告げをもらうタイプで、枕元に先祖とか人が立って色々、教えてくれるみたいよ。

だから突然、電話して来て、私が海外旅行の予定がある時に、

「飛行機がヤバイから行くのを辞めて」って言われたこともあるわ」

リリーは口元を隠して笑った。

「それで、ママ、行くの辞めたのですか?」

サトシは真顔で聞いた。

「やめないわよ〜。だって、どうとでもなるわよね〜…

でね、すぐ上の姉は、この環境も嫌!信じたくもない!その辺に霊体が居るのも認めたくない!ってことで、頑張って遮断して生きてる人なの。

姉妹も色々で面白いわよね〜」

「なんか、ママはママで安心します」

満面の笑みでサトシが言った。

「やめてよー。でも、私も嫌いじゃないわ」

リリーは、そう言うと新しいタバコに火をつけて

おどけてみせた。

・・・

後日聞いた話だか…

末娘は遠隔で姉ちゃんの家に来た霊体を外に追い出すだけではなく…

悪気もなく、霊体を触り、一瞬で粉末化させて

強制成仏?させていたらしい…

くわばら…

くわばら・・・