第21話ーサトシの疑問

19時に看板をつけた後に、サトシはビールを持ってきて

「ママ、御予約まで今夜は後1時間あります。

それまで、いろいろと気になってることを質問してもいいでしょうか?」

いつもより丁寧にきく。

 

目の前に置かれたビールに口をつけながら

【Bar Siva】オーナーのリリーは軽く頷いた。

 

「この前、ママが言った【あの世の公務員】って何なのですか?」

サトシは1番気になっていることを尋ねた。

  

リリーはグラスを置いて遠くを見つめる。

そして、タバコに火をつけた。

 

「あの世の公務員って、言葉のままよ。

生まれ変わりセンターってところに居たの。

そこで次に生まれ変わるお腹を案内するの」

 

  

「生まれ変わりセンターですか?」

 

「そう!わかりやすく言うと、そんな感じよ」

 

「名称じゃないんですか?」

サトシは素直に質問した。

 

  

「名称なんてなかったと思うわ。記憶にないだけなのかもしれないけど・・・

この世の言葉で表すとして、1番しっくりくるのが【生まれ変わりセンター】っていう表現かしら?」

リリーはタバコを吸いながら答えた。

 

「そのセンターに行くと、この世に来れるってことですか?」

 

「まぁ〜そうよね。

妊娠してる誰かのお腹の中のベイビーの中、意識として入ってくるって感じかしら?」

リリーが表現に悩みながら答えた。

 

サトシが大きな声で言った。

「えっ?! 意識は後から来るんですか?」

 

リリーは声の大きさに、ビクッとして

「声大きい…意識は後ってより体が先っていう方が普通かしら。

だから、心と体の性別が違う人がいるの」

少しトーンを低く話した。

 

「す、すみません。いろいろ驚いてしまって」

サトシは頭をかいた。

 

「そうですよね。ママのお友達の人で色々な種類?性別?の人が多いですよね」

 

「種類って…」

リリーは苦笑した。

 

「変な意味じゃないですよ。僕、偏見っていうか、そんなのないですし」

サトシが慌てて弁解した。

 

「知ってる」

リリーはバッサリ切った後に笑った。

サトシも一緒に笑うとリリーが切り出した。

 

「他には何が知りたいの?」

 

「他にですか?…

たくさんあり過ぎて何から聞いていいのか迷いますが、

ママは、あの世の公務員だったのに何で、この世に降りて来たのですか?未練とか?」

サトシは前のめりに尋ねた。

 

リリーは、顔を覗き込むサトシを横目に

ゆっくりとタバコを消して話し始めた。

 

「未練っていうのかしら?…やり残したこと、やれなかったことを叶えるのに来たの…。

そう、それは未練なのかもしれないわね。

生まれ変わりセンターで働くことに不満もなかったんだけど、どうしても叶えたいことがあったのよ」

 

「それって何かきいてもいいですか?ちなみに叶えたのですか?」

サトシは柔らかい声で言った。

 

リリーはサトシの方へ顔を向けながら

「あと少しかな?叶うまで…あの人の赤ちゃんを産みたかったの…どうしても産みたかったの…ただ、それだけ…」

小さい声で答えた。

 

「ママの娘さんのことですか?」

サトシはストレートに聞いた。

 

「そうよ。産みたかったの」

そう言うとリリーは優しく微笑んだ。

「あの人の子供って、ご主人とは、いわゆる前世からの繋がりがあるってことですか?」

サトシは不思議そうに言った。

 

リリーはビールを呑みながら軽く頷いた後

「元、旦那ね」

と訂正した。

 

「あ、はい。元旦那さんとの子供を産むのが目的だとしたら、願いは叶ってますよね?」

サトシは更にきく。

 

「そうね。叶ってるわ。後は私がいなくても生きていける様に育てるだけよ」

リリーはビールを一気に飲んだ。

まるで気合いを注入したかの様だった。

 

「前世の繋がりって皆んなあるのですか?」

 

「そうね〜。そういう人が多いかしら」

 

「えー?じゃぁ、ママと僕もあるんですかね?」

 

「さぁ、分からないわ。あなたと居ても記憶が蘇らないし、映像も飛ばないわ。だから、大きな繋がりってわけでは無いのかもしれないわね」

リリーは首を傾げて長い髪を耳にかけた。

 

それはまるで何かを聞き取る、想いおこす様な仕草に見えた。

 

サトシは、この機会を逃すことなく続けて質問をする。

 

「もう、ママはこの世の中で、やり残したことはないってことですか?あ!・・・娘さんが独立する以外はってことです」

 

「やり残したことってより、新たにやりたいことはあるわよ」

リリーは再びタバコに火をつけた。

 

「その新しくやりたいことって何なんですか?」

サトシは間を空けずに質問する。

 

リリーは満面の笑みで

 

「秘密!言わないわよ〜」

と言って笑った。

 

サトシは

「えぇ〜?!教えてもらえないんですか?ますます気になります!」

と大きな声で言った。

 

サトシが続けて質問をしようとした時

お店の電話が鳴った。

 

おそらく予約の電話だ。

 

「質問タイムは、ハイ!おしまい!」

 

そう言うと、リリーは残念がりながら電話に出たサトシに向かって、左手でバイバイをした…

 

・・・

 

続きは、また今度…