第50話ーあの世の公務員の同窓会

【Bar Siva】は定刻通り19時に看板が点いた。

とは言っても本日は貸切である。

定刻前に来店しているサクラとの昔話を楽しんでいるオーナーママのリリー。

『あの世の公務員』の現世の中では1番の若手であるサクラ。

白のミニのワンピースに黒のタイツ、大きめのカジュアルなコートに存在感のあるシルバーピアス。

サクラという名前のイメージとは真逆で彫りが深く鼻筋が通っており、10人が10人、彼女を美人と答えるだろうフェイスの持ち主である。

そのフェイスに濃いピンクをメインとしたメイクが更に彼女から目が離せなくさせる。

その美しさがあの世での試練の引き金になったのは言うまでもない…

その話は全員が揃ってから…

リリーは空のビールグラスをボーイのサトシに見せた後に

「もう1杯ビール?」

とサクラに聞いた。

サクラは軽く頷いて残っているビールを呑み干した。

そこへ勢いよくドアを開けてお蘭が入って来た。

「おーひーさ。やっと到着よ。途中で遭難するかと思ったわ。しかも店先でバッタリ会ったわ」

お蘭の向こう側から響が現れた。

「ヤッホー。お揃いね。あ、サクラ、ご無沙汰」

響は左手を上げて小さく手を振りながら、お店の中に入って来た。

お蘭はワイドパンツの黒に大きめの黒の長袖ワンピースにロングカーディガンの黒を羽織っている。

親指ほどあるラブラドライトのストーンのペンダントを身につけているのが印象的である。

響は黒のスエードのロングドレスに黒のストールを巻いている。

ゴールドのロングピアスと特注のシルバーリングを両手に身につけている。

独特の雰囲気を身にまとい、赤色のキラキラしたメイクで、響ワールド全開である。

リリーはサクラの横に響、響の横にお蘭を案内してサトシに目配せをした。

「響様、お蘭様、いらっしゃいませ。何を飲まれますでしょうか?」

おしぼりを渡しながらサトシが聞いた。

「私はシャンパンにするわ」

響がストールを脱ぎながら答えた。

「私はぁ〜日本酒いきたいけど、1杯目はビールにするわ」

お蘭が席に座りながら答えた。

「かしこまりました」

そう言うとサトシは厨房へ入って行った。

ひと段落するまで待っていたサクラが口に出した。

「マジ久しぶりだし。いや〜、響さんめっちゃ懐かしいですわ。って、変わってないですよね〜」

笑いながら大きな声で響に向かって言った。

「サクラも変わってないし」

響が笑いながら答えた。

「やだぁ〜。みんな変わらないわよね。変わりようがないわよ。前世からだと久しぶりって感じよりも懐かしいになるのね」

お蘭は話しながら右手でおいでおいでの手をして口元を押さえた。

リリーが口を開こうとした時に厨房からサトシが出て来た。

響にシャンパン、他の3人にビールを出すと

「お疲れ様でした。乾杯をどうぞ」

とサトシが言ったのを合図に

「かんぱーい」

という声とグラスの当たる音が店内に響いた。

ビールをひと口呑むとリリーが口を開いた。

「あの世のこと、どれだけ覚えてる?」

響が間髪入れずに答える。

「生まれ変わりセンターのこと?リリーと私は同じ部署に居たわよね」

お蘭も反応する。

「関所越えてからのことかしら?私は迷子センターで私も迷子になったりする忙しさだったけど」

「サクラが、1番覚えてる感じかしら?」

リリーが口を挟んだ。

皆んながサクラの顔を見た。

サクラは皆んなの顔を見渡してから答える。

「私は最初は関所を通った後、皆んなと同じ空間にいました。

お偉いさんに気に入られたみたいで配属先が関所後の統括というか、全体的に色んな部署に行く感じでした。

その時、ママにも会ってますし、鮮明ではないですが、多分、響さんにも会ってると思います」

「多分会ったと私も思うわ」

響が答えた。

サクラは新しいタバコに火をつけてから続けた。

「そんなある日、急に部署を変わる様に目上の女性に言われて…

関所の向こう側、受付の方の部署へ移動になりました」

サクラはカウンターに目線を落としたまま話している。

「そこは皆んながいた場所とは全く違う空間で…」

サクラの言葉が続かない…

「ひどかったの?」

リリーが静かに聞いた。

サクラはリリーをチラッと見て答える。

「ひどいって言葉が当てはまるか分かりませんが…

あまり記憶がありません…」

サクラがそう言った事によって、リリーも響もお蘭も目配せすらせずとも状況を察した。

「ま、私たちだって全部いちいち覚えてないし」

響が口を開いた後にタバコに火をつけた。

「私なんて迷子になった人を目的地に連れて行く仕事のはずなのに、自分がどこにいるか迷う始末よ〜。ヤバイわよねぇ」

お蘭が身振り手振り付きで、そう言うとビールを呑み干した。

「私、日本酒もらおうかしら?サトシ、ある?」

お蘭がサトシに言った。

「はい。ございます。お蘭様、飲み方はどの様にされますでしょうか?」

出来るボーイのサトシは即座に答えた。

「熱燗にして」

そう言うとお蘭は、しなりとお辞儀をした。

「かしこまりました」

サトシが厨房へと入って行った。

そのやり取りが終わるのを待ってリリーが切り出した。

「前にサクラとあの世の地図というか、仕組みを皆んなで覚えてることを出し合って、まとめてみるのも面白いよねって話になったのよ」

「それ面白そう!でも、そんなに広範囲で覚えてないかも?」

響が即答した。

「そうなの。私と響は生まれ変わりセンターに居たから、あちこち行く暇もなかったのよ」

リリーが捕捉した。

「やだ。私なんてウロウロしてたけど、なにせ方向音痴ですからイマイチ覚えてないかも…」

お蘭が左手を口にあてて話した。

「そうなると私が1番ウロウロしてるのかもしれません。

関所のところは結構覚えてると思います」

サクラが少し笑みを取り戻して答えた。

「だったら、宿題にしない?

次回の集まりまでに意識して、あの世の地図を思い出しておくってことで良くない?」

響がタバコの煙を吐きながら提案した。

「それ、賛成」

お蘭が即答した。

「宿題にしておく方が落ち着いて思い出せるしね」

リリーも賛成した後に続けた。

「では、それで宜しくお願いします。次回の集まりが楽しみね」

そこへ厨房からサトシが熱燗を持って出で来た。

「お待たせ致しました。お蘭様、熱燗でございます。2合にしています。銘柄は【獺祭】にいたしました」

「さすが!サトシは出来る男よね〜。私の好みを覚えていたのね。ステキング」

お蘭は上機嫌だ。

「私もシャンパンお代わり」

響が空いたグラスをサトシに渡した。

「私は白ワインをグラスでください」

サクラが注文した。

「あら?サクラが本気出してきたってところね」

リリーがニヤケ顔で言うと

「今日は呑もうやぁ」

響が気遣って言う。

「呑むに決まってるわけでぇ〜」

お蘭は前のめりで盛り上げる。

サトシが注文されたものを電光石火で持って来た。

「では、改めまして乾杯で!」

「朝まで呑むわよぉ〜」

「はい!かんぱーい」

わぁーっという声とグラスの音が店内に再び響いた。

この話の続きは…

また今度…