第56話ー宇宙人会

今宵の【Bar Siva】は1人の女性の来店を皆んなで待っている状態だ。

今宵の最後のお客様であるその女性を先に来て待っているルルコ。

ボーイのサトシは今から登場する女性に会ったことがない。

オーナーママのリリーとルルコの会話を聞きながら会いたくてワクワクが止まらない。

リリーの周りの人物は興味深い人が多い。

その中でも少し違った感じが伝わるのでサトシはリリーとルルコの顔を交互に見ながら2人の会話を一語一句逃さない様に聞いていた。

そこへお店のドアが開いた。

「いらっしゃいませ〜」

サトシが反射的に極上の笑顔と共に爽やかに言った。

ドアを開けたその女性、千ちゃんは真っ直ぐカウンター席へ向かって入って来た。

「お待たせしました〜。前の用事が長引いてしまって…」

と言いながら大きな鞄に望遠レンズ付きのカメラを片手に軽く会釈をした。

ルルコが席に座ったまま振り向き

「初めまして。ルルコです」

とキッラキラの笑顔と『ゆるふわ』の雰囲気、小鳥のさえずりの様な声で言った。

千ちゃんは立ったまま

「あー初めましてでしたね。宜しくお願いします。なんだか意識レベルで繋がってて勝手に知ってるもんだと勘違いしてました」

とメトロノームくらい正確なリズムの音で言った。

ボーイのサトシは挨拶が終わるのを待って口を開いた。

「いらっしゃいませ。千ちゃん様、何を飲まれますでしょうか?」

「えーっと、まずはウーロン茶をください」

千ちゃんは座りながら答えた。

「かしこまりました」

サトシはそう言うと厨房へ入って行った。

「ご無沙汰に思えないけどご無沙汰よね?」

リリーが言った後に微笑んだ。

「そうなんですよね。何だか会ってない感じは全く無いのですが、肉体レベルで言うと、お久しぶりですね」

千ちゃんはスラスラと変わった表現を使う。

ルルコが笑顔で

「千ちゃんってスピリチュアルな人なんでしょ?」

ストレートに質問をする。

「スピリチュアルな人?ですね」

千ちゃんは真顔で答えた。

「すごーーーい!えっとぉ、それって、どんな感じなのかしら?」

ルルコはウキウキが溢れながら前のめりに聞く。

千ちゃんは質問に答える前に鞄からICレコーダーを取り出して

「取材も兼ねて帰って来てるので録音しますねぇ」

と言いながらセッティングした後に続けた。

「ルルコさんも宇宙人ですよね?次元を超えてますよね?何次元かしら?」

そう言った後に千ちゃんは目を閉じて少し遠くを見据えた。

3秒ほどだろうか?何かが見えただろう後に目を開いて言った。

「7次元ですね。もう宇宙の星の*%○□⭐︎から来てますよね?」

「え?どこ?どこ?」

ルルコが揺れながら更に前のめりに質問する。

「*%○□⭐︎星です」

これは実際、リリーには聞き取れない音である。

というよりも、耳に音が入っても残らないのだ。

ルルコは聞き取れたらしく

「あーー!知ってる。私そこから来てるってことかしら?楽しー」

ウキウキを通り越して何だかクルクルしてる。

リリーは聞き取れないながらも

「2人とも宇宙人ってことね」

そう言うと黒目だけで2人の顔を交互に見た。

あっ!

正確に言うと茶色目だが…

「リリーさんも宇宙人だから皆んなですね」

千ちゃんが言った。

このやり取りの間にボーイのサトシはウーロン茶を静かに運んで来ていた。

そして、3人とも目配せでエア乾杯も済ませた。

「私が宇宙人?ってより全世界の人が宇宙人でしょ?」

リリーは真顔で言った後にサトシに空のグラスを見せた。

出来るボーイのサトシは小さく頷くと厨房へ入って行って即座にビールを運んで来た。

リリーはご満悦な顔でビールを受け取ると、ひと口呑んでから続けた。

「地球にいる人の大半が宇宙人と繋がるってキーワードを使うけど、私たちって宇宙に居るのでは?って、いっつも思うの。

だけどそれを口にするのは悪い気がするから黙ってるしかないのよね。

って、そもそも宇宙と繋がるって何?」

この質問にルルコが即答した。

「皆んな、宇宙にいる自覚ないのよ。

だから皆んな、わざわざ宇宙と繋がろうと思うの。

リリーさんはナチュラルに宇宙と繋がってる人だから分かりにくいかもね」

そこへ千ちゃんも付け加える。

「皆んな、見えないものを見える人たちに憧れるの。

だからリーディングやヒーリング、オーラだのパワースポットって言葉に反応もするし、実際は何も感じなくても、そこに来ているということだけで良い気分になるの。

それが重要なだけなの」

「なるほど。見えないもの、見ないこと、知らなくていいことを知ろうとする気持ちって分からなくはないけど、知って辛くなるよりは知らない幸せ、知らないふりをして幸せの方が断然良いと思うのにね…」

リリーは、しんみりと言った。

そこへ突然ルルコが気になっていた質問を投げかけてきた。

「千ちゃんは何次元なの?」

「私?私は現在9次元にいるし、リリーさんは半分はあの世の公務員の仕事を無意識レベルでされてますよね?」

千ちゃんがいきなりぶっ込んできた!

「あの世では既に出世していて、生まれ変わりセンターには居ないし、早く帰ってきて欲しいのも伝わって来てるけど…

この世の最後を思い切り後悔のない様に楽しんでから帰る予定です。

私、もう、生まれ変わらないので…」

リリーは答えながら珍しくテンションが上がっていた。

それを抑えるかの様にタバコに火をつけて深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐いた。

「そうですね。皆んな帰って来て欲しそうだから今でも半分向こうにいて、寝ている間とかに働かされてるみたいですね」

千ちゃんはサラリと不思議なことを言う。

ルルコも頷きながら聞いている。

この状況でサトシだけが疑問で頭の中がハテナの魚群が通過している。

しかも、行ったり来たり…

だが、ここで質問して場を崩しては出来るボーイではない。

からこそ、質問したいことを頭の中でリピートしながら覚えていく作業を地道にしていた。

これは明日にでも聞こう…

「最近、たくさん寝たいのは、それもあるのかもね」

リリーはニヤケて言った後に上を向いてタバコの煙を豪快に吐いた。

ルルコが『ゆるふわ』全開なうえにトキメキや煌めきが止まらない状態で

「何だか、楽しくない?うふふ」

色んなビームを発してるに違いないくらい上機嫌で言った。

「楽しいわよね」

珍しくリリーが即答する。

「私たちって潜在意識というか、前から繋がってて、こうやって目の前に揃って逢うと更にエネルギーが増長して☆#+*%$・・・」

千ちゃんが興奮してきて音が、まるで宇宙語になっている。

この状況でルルコだけは

「そうなのよねぇ。うふふ」

と答えている…

きっと彼女には普通に聞き取れているのだ。

恐るべしルルコ!

恐るべし宇宙人会…

このテンション、このエネルギーの融合の中、時間はあっという間に過ぎ去っていった…

千ちゃんは取材でもあるからと色んなバージョンの写真を素早く撮って、今宵は解散となった…

この話のエピソード、解説は又今度・・・

今宵はココまで…